求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
8 それでも好きだから
遥人の様子が突然変わった気がする。
ふたりの間に漂っていた甘い空気がいつの間にか消えていた。

「才賀君、どうしたの?」

「話しておきたいことがある」

「話?」

「俺にとって言い辛いことで、多分結衣に軽蔑される」

「まさか」

今もこれからも彼を軽蔑する訳がないのに。
でも遥人の様子は深刻そうだ。

(何かすごく重い話なのかな? でも軽蔑って……私にとってよくないこと?)

だんだんと不安になって来た。でも聞かない選択はないので、遥人の言葉を黙って待つ。

「事故の日に会う約束をしていた相手なんだけど……女性なんだ」

「……女性」

もしかしてと思っていたので驚きはしないが、やはりショックだった。

(才賀君はその女性と、私との約束の前に会おうとしてたんだよね)

結衣との旅行の約束を守るつもりだったのなら、それ程時間は無かったはず。

(そうだとしたら相手は友達で、何か用が有ったとか? でも私との約束をキャンセルするつもりだったとしたら時間はたくさんある)

遥人に限ってそんな不誠実な行動を取る訳がない。
でも、普段の自分らしくない行動を取ってしまうような緊急事態だったのだとしたら。

頭の中であらゆるケースを予想する。でも答えが出るわけがない。遥人本人に聞くしかないのだ。
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