未明の三日月 ~その後
3

予定日の二日前。

明け方から 陣痛は始まった。


診察時間まで我慢して、二人は 病院に行く。
 
「取りあえず、入院しましょう。生まれるのは 夜になるかな。」

事も無げに言う 医師に、佳宏と美咲は 顔を見合わせた。

 
「こんなに苦しいのが、夜まで 続くんですか。」

美咲より先に、佳宏が 医師に聞く。

医師は、温かく微笑んで
 
「これから、もっと苦しくなりますよ。ご主人、奥さんを 支えてあげて下さいね。」

と言った。
 


そのまま 美咲に付添う佳宏。

陣痛の間隔は どんどん短くなり、苦しい時間が 続く美咲。



医師の言葉どおり、日付が変わる直前 美咲は 元気な女の子を産んだ。


「美咲、ありがとう。お疲れ様。」

出産に 立ち会った佳宏は、涙を浮かべて言う。
 
「女の子だったね。可愛い。」

美咲の胸の上で 泣き声を上げる赤ちゃん。


ずっと美咲を支えてくれた佳宏に、美咲も 感謝でいっぱいだった。
 

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