未明の三日月 ~その後
17

最近の佳宏は、とても良い 顔つきになっていた。


すべての経験が 自信になって 佳宏に 余裕と貫禄を与える。

穏やかな知性が 表情から滲み出て 会社でも家庭でも 頼りになる存在だった。
 


美咲が入社した頃の 佳宏は、大人しくて 地味だった。

仕事も 受け身の印象だった。



だから美咲は 20代の佳宏を よく覚えていない。


無意識で 過ごしていたから。



佳宏の仕事は 綿密で忠実だった。


大胆な成果は 出さないけれど 確実に積み上げていく。


そう言えば、佳宏に 書類の不備を 指摘したことは 一度もないと 美咲は思った。


準備や後処理に 佳宏は 手を抜かないから。
 


美咲に 声を掛けた頃から、佳宏の仕事は 認められていく。


佳宏の顧客は 皆、取引が 長く続く。


佳宏の 誠実な対応に 満足しているから 競合しない。



遠回りのように見えて、確実な仕事を 積み上げていた。
 



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