本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~
「下を向いて歩く程に嫌がってるなら、無理強いはしない。…嫌だよな、休日まで上司と一緒に居るなんて…」

「……ち、違うんですっ。嫌、だか、ら…じゃないんです…」

私の態度が支配人を傷付けてしまっていた。職場での傲慢な態度ではなく、か細く消えてしまいそうな声で私に話しかける。

私も語尾に近付くにつれ、小さくなりながらも否定をする。

前を向けなかったのは…、顔を見て話せなかったのは意識をしてしまい、恥ずかしかったから…。

「…むしろ、逆なんです」

「逆?」

「…支配人の毒牙にやられて、顔を見れないんです。と、とにかくっ、上司と部下の関係は保ちたいので、あんまり毒牙を振り撒かないで下さいっ」

必死に声を絞り出し、思いの丈を伝えた。

恋なのか、恋じゃないのか、今はまだ分からないけれど…、一緒に居れば居る程に上司と部下の関係は崩れて行くだろう。

優しくされればされる程、支配人を知れば知る程、深みに嵌るのは自分だけだと思う。

支配人程の聡明で周りからの信頼も厚く、麗しさを併せ持つ人が、私なんかを好きになるはずがない。

───だから、その前に、好きになる前に気持ちを抑えるしかないんだ。
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