本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~
夢のような時間はあっという間に過ぎてしまうもので、我に返った。一颯さんが私の顔を覗き込み、体制を変えた時に抱き着いた。

「おやすみなさい。今日は本当に楽しかったです。有難う御座いました」と言って、一颯さんの唇に自分の唇を重ねた。

一颯さんの両頬に私の両手を触れての軽いキスだったが、次第に形勢逆転になり、深いキスへと変わった。

「……おやすみ。可愛い事をしてくれて連れて帰りたいのは山々だが、名残惜しくなるから…」

「………連れて帰って下さい。今日だけ、もう我儘言わないから…!」

別れ際、次第に目に涙が溜まってしまい、今にも溢れてしまいそうだった。私はこんなに涙脆かったかな?我儘を言わないと決めていたのに、寂しくて堪らなくて言葉が零れてしまった。

三か月間、一人で見習として本店に修行に行ったけれども…楽しくもあり、心寂しい日もあった。支店に戻ってから褒められたくて一生懸命に仕事内容を習得しようとしてた。邪な考えを持ちつつ、思い出すのは常に一颯さんの事だった。

「……ったく、俺の決心が鈍ってしまっただろ」

「……すみません」

一颯さんは大きな溜息を吐き、再び車を月額駐車場まで走らせた。一颯さんのマンションから月額駐車場までは少しだけ距離があり、再び一緒に歩き出す。

「酔いは覚めた?」

「……はい、だいぶ。頭がふわふわしなくなりました」

マンションに着くとペットボトルの水を差し出された。その後はシャワーを浴び、スマホからアラームをかけて一緒のベッドにゴロンと横になる。

ベッドに入るとおやすみのキスをしてから、私の身体を抱き締めて「おやすみ恵里奈、今日は一日有難う」と言って、本の僅かな時間で一颯さんは寝息を立てていた。

こちらこそ、有難う御座いました。大好き、一颯さん……!私も一颯さんを抱き締め返して、そのまま眠りについた───……
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