本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~
本店に見習いとして行った時は、高見沢さんとは別の方が指導係だった為に接点はあまりなかった。時々接点があったとしても、私の事は気に入らないらしく、難癖はつけてくる。高見沢さんは英語、フランス語もペラペラな帰国子女だ。ハーフやクォーターではないらしいが髪の毛も茶色みを帯びていて、顔立ちも綺麗でそこそこ身長もある申し分ないスタイルだが……性格に難がある。

「一颯君もさ、何であんたなんかをバトラーにしようと思ったのか理解出来ないよ。まさかとは思うけど…、男女の関係とかじゃないよね?」

ギクリ。

持参のホットレモンティーをカップに継ぎながらの高見沢さんからの指摘に慌てる。高見沢さんはギロリ、と私を睨みつける。私は思わず、目線を反らしてしまう。

「あんたさぁ、英語もまずまずだし、接客もまぁまぁだし、何か取り柄でもあるの?そんなんで一颯君に取り入ろうとか有り得ないから!」

「は、はい……。仰る通りです…」

「顔だけは可愛いかもしれないけど、一颯君に相応しくないからね。…こんな相応しくない奴が一颯君の彼女の訳ないよね?……ねぇ?」

ぎゅむ。

高見沢さんに鼻を摘まれ、息も出来ないし、何より痛い。私に対する憎しみからか、摘んでいる指の力が強いから涙が滲む。

「コラッ!高見沢、止めなさい!」

「いてっ。……あ、一颯君!」
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