慈愛のケモノ
きもち。




ガチャン、と鍵の閉まる音が聴こえる頃には唇を塞がれていた。
柔い唇が重なって、口を開いた途端に舌が入り込む。歯列をなぞってから上顎を擽られた。

なぜ、こんなことに。
私は生きて帰られるのだろうか。

「かわいー、歯ちっさ、クチの中もっと見して」

遠月さんは多分変な人だ。というか変態だ。いやこれを変態と一括りに示して良いのか分からないけれど、普通じゃない。そしてそんな遠月さんに私は好かれているらしい。

口の中見たいって、歯医者さんか。
ツッコミたい気持ちを抑えつつ、口を閉める。

「白目のとこ、すげえ綺麗」

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