強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~

揺らぎと変化


あのあと天袮さんは「大事な用事があるのを忘れていた」と、また大慌てで帰っていった。夕飯の片付けを終えると、アイスコーヒーを淹れて八雲さんのいるリビングへと向かう。

「八雲さん、一息入れませんか?」
 
仕事を持ち帰っていたのか、八雲さんは見ていた書類から目を離し顔を私に向けた。

「ありがとう。ちょうど、喉が乾いてたんだ」
 
八雲さんはアイスコーヒーを受け取ると、ここに座れとソファを叩く。

「何を見てたんですか?」
 
隣に座り、八雲さんが見ていた書類を覗き込んだ。あれ、これって……。

「ポキットのコラボ企画……」

「そう。芳奈の企画だ」
 
私から書類を奪い、意味深に笑う八雲さんの顔を見て、昼間のことを思い出す。
あ、そうだ。どうして八雲さんも一緒に名古屋出張に行くのか、その理由を問いただすのを忘れていた。

私もバッグから企画書と赤ペンを取り出し、八雲さん前に突き出して赤ペンでチョコレート専門店のところを大きな丸で囲む。





















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