エリート外科医の滴る愛妻欲～旦那様は今夜も愛を注ぎたい～

プロローグ

大企業のオフィスビルやカフェ、レストランなどが立ち並ぶ賑やかな大通り。

そこから一本奥の道に入るだけで、辺りはシンと静まり返る。

個人経営の工房や小規模オフィスなどをテナントに持つ雑居ビルがひしめき合い、漂っているのはちょっとしたマイナー感。

夜である今はなおさらで、はっきり言って薄気味が悪い。

そんな路地の一角に。この場所には似つかわしくない高級車が停まっていた。

街灯に照らし出されたのは、真ん丸のヘッドライトに、垂直のフロントグリル。その上にちょこんと載った立体的なエンブレム。

真っ黒でピカピカなボディ、まるで英国王室御用達のクラシカルなデザイン。

その高そうな車のボンネットに軽く腰かけ、腕を組んでいる男性がひとり。

真っ黒なスリーピースのスーツに先の尖った革靴。長身でスタイルがよく、隙のない佇まい。

高級車に寄り添う姿が絵になっていて、まるでファッション誌の一ページを見ているようだ。

非現実的な光景を目の端で捉えながらも、私は家路を急いだ。