エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
第三章 彼の鼓動の音に耳を澄ませながら
それからの二週間は、信じられないくらいに仕事が忙しかった。

納品したプログラムの保守に加え、権蔵さんが抜けた穴の補填。

しかも、権蔵さんの担当していたプロジェクトは、最大の難関となる製造フェーズ――新人や派遣社員を大量投入し、人員を一気に膨らませて、短期決戦をしようとしている、まさにその時だった。

そこに指揮を執る人間がいなくなれば、新たに参入したメンバーたちはどうしていいのかわからず、パニックを起こしてしまう。

開発手順がわからない、テスト環境がわからない、データーは誰が投入するのか、サーバーは? インフラは? そういった細かい疑問が積み重なって、最初の三日間は作業がほぼストップしてしまった。

三日とはいえ、三十人が三日間作業を止めれば、九十日分の遅延、つまり三カ月のスケジュール遅れが生じてしまうのだ。

そんな状況、とても顧客に説明できない。隠すのに四苦八苦だ。

プロジェクト内部は文字通り、しっちゃかめっちゃかになっていた。
< 72 / 259 >

この作品をシェア

pagetop