バイオレット・ダークルーラー

傍観者








御堂くんは、わたしが誰に会いたいのか分かっていたのかもしれない。



「…何者なんだろう…」



時刻はもうすぐ午後5時になるところだった。

…放送室を出たわたしは、誰もいないのをいいことにひっそりと呟く。



あの日。紫月さんと会った日、スーパーピンクムーンがすみれ色みたいだと、莉菜と歩いていて思ったんだ。

…御堂くんが言いたいのはきっと、明後日の黄色い満月なら窓の色と調和してすみれ色に見えるかもしれない、ということだ。


どちらにせよ、2回目のすみれ色の月に出会えるかもしれないと。



――…わたしは御堂くんに、あの日すみれ色の月を見たなんて一言も言っていない。

それでも、彼の耳に鈍く光るすみれ色のピアスは、「御堂紫苑」というひとを象徴し続けている気がしてならなかった。



なにを、どこまで。

…御堂くんはわたしのことを、麗蘭街の人たちのことを、どこまで知っているんだろうか――…。



――…ドンッ!



「わっ!?」

「きゃあ!」

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