医者の彼女
1人フラフラと街を歩く。

和弥さんに出逢ってから今まで、どれだけ頼って
甘えて生きてきたかを痛感する。

少し前の私なら1人で何でもできて、
こんな事にも動じないはずだったのに。

今はもう何をどうして良いのかが、わからない。

どれくらい歩いたのか分からない。
見た事のない街景色。
外はだんだん暗くなってくる。
ただでさえ今日は歩き回っていたから、
そろそろ体力的にも限界。

大通りから小道に入ってしばらく行った所に
小さな公園を見つける。

藤の木の下にベンチがあり、少しの雨なら
しのげそうだったので、そこで休憩することにする。
ベンチに座り、これからどうしようかと
考えるが、考えなんてまとまるはずもなく…
1人途方にくれる。

「ゴホッゴホッゴホッ…」

また咳、もう嫌だ…

咳は止まらず、息もしにくくなって来た。
薬は、ハンドバッグに入れたまま。

幸いなのは、夕方に比べれば全然マシってこと。

このまま死んだら、楽になれるかな…

和弥さんに出会うまでは早く死にたくて
仕方なかった。
でも、一緒に過ごしてる時はそんな事
考える暇もないくらい幸せだった。

…あ、婚約者事件の時は死にかけたな。
あれはあれで辛かった…

今までのことが走馬灯のように思い出される。

色々あったけど、思い出すのは幸せなこと
ばかりで、私の人生捨てたもんじゃないって思えた。

今なら死んでももう後悔はない。

だから…不思議と恐怖心はなく、苦しさも
感じないほど穏やかな気持ち。







…ーーー
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