Letter from the Starry Sky ―君がくれた世界―
Orion




どうして。



「なあ、いい加減股開けよ」



どうして私はこんな場面に遭遇している!?



約5分前。6時間目を終え、掃除の時間になった。

私は掃除当番が裏庭に回ってきたからここに来た。そして、落ち葉を掃いていると会話が聞こえてきたのだ。

声のする方を辿ると、小さな倉庫の裏側で話しているらしい。


そして、今に至る。



「無理だってそんないきなり……。お前のでかいし急には入んねえよ……」



話しているのは男子生徒二人。なんと同じ1年。しかも意外な組み合わせ。


片方――腕を組んで機嫌が悪そうに話している方――は、学年1の秀才、手塚裕人(てづか ひろと)だ。

定期テストは勿論、模試、実力テスト等々ほとんどのテストで学年1位を獲得している……らしい。順位が貼り出される訳ではないので本当か嘘かは知らない。

もう少し上の高校を狙えたのではないか、と噂されているのをよく聞くから知っている。


そしてもう片方――フェンス際に追い詰められ、眉を下げて今にも泣き出しそうな顔をしている方――は、これまたびっくり、学年1のチャラ男とか不良などと言われている夏川清哉(なつかわ せいや)だ。


うちの高校は学力でいうと上の下といった所だろう。地方の基準で言うとトップ層になるのだろうが、なにせ都内。上の学校はいくらでもある。


何が言いたいかというと、それほど馬鹿な学校ではないからいわゆる“不良”は居ないと思っていた。だけど、入学してこの夏川を見た瞬間驚いた。

見た目だけで言えばそこまで不良の典型ではない。ちょっとネクタイが緩いくらいだ。(あ、髪は明る目の茶色だけど、染めている訳では無さそうだ。)

だけど何よりも言動と雰囲気がチャラい。というか、緩い。

教師にはタメ語、遅刻、早退の常習犯、授業中はほぼ全て爆睡――これに関しては出ているだけましかな?――、提出物は守ったことなんて無いのでは?

とまあ、こんな感じでやりたい放題な彼の噂もよく聞くので彼のことも知っている。


だけど今、その夏川が手塚に追い詰められているらしい。――恐らく、夜の営みのことで。



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