もう一度君と ~記憶喪失からはじまる2度目の恋~
迷子
朝食後、買い物へ行くことを嶺に伝えようとすると嶺はソファで眠っていた。
やっぱり昨日寝てなかったのだと思いながら、私は嶺の体に毛布を掛けた。
仕事も最近締め切り前で忙しかった嶺。
疲れた顔をしているのがずっと気になっていた。

私は少しでも嶺が休めるようにと静かに静かに部屋を出た。

今ではすっかり覚えているマンションの近くの商店街への道。

歩いて移動することで少しは食欲がわいたり、のどが渇いたり、体が循環するような気になる。

そしてお日様のもとを歩くのが心地よい。

よく通っているスーパーで私が買い物をしていると隣に若い女性と、車いすに乗った年配の女性が買い物をしていた。
その声がよく聞こえてくる。
「あー、あんたはそうやって私を殺す気なのね。」
年配の女性の口調が強い。
「仕方ないじゃないです。病気がひどくなりますよ?」
きかないようにしようと思っていても聞こえてしまう声のボリューム。
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