幸せにしたいのは君だけ
４．「やっと俺のものになった」
圭太さんが海外に戻って数日が経った。

私の日常はウソのように平穏なものになると思っていた。

彼の仕事は多忙だろうし、時差だってある。

きっと私に連絡なんてないだろうと考えていた。


けれど、その予想は簡単に裏切られた。

彼はメールやメッセージアプリ、電話などあらゆる方法を駆使して私に連絡を取ってくれた。


『元気にしてる？』

『今日、こっちはいい天気だよ』

『佳奈に会いたい』


赤面してしまうくらいのセリフが次々と送られてくる。

忙しいはずなのに、この人は私のために時間を割いてくれる。

その事実が嬉しくて、切なかった。


今日も帰宅すると、電話がかかってきた。


『メール、読んだ。総務事務に異動するのか？』

「はい、違う仕事に挑戦したいと思って……私は事務経験がないので、今さらなんですが」

『いいんじゃない？　新しい仕事に挑戦するのは最初は大変だろうけれど、やりがいがあるから。具体的にどんな仕事？』

「以前に澪さんがなさっていた書類仕事から始めようって言われています」

『ああ、なるほど。アイツはああいう細々した仕事、好きだったから。今でもそうだけど、意外にきっちりしてるから、スケジュール管理とか得意なんだよな』


さらりと言われた言葉。

胸にチクリと小さな棘が刺さる。
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