諦めて結婚いたしましょう~一途な御曹司の抑えられない独占欲~
私のすべて
 ――秋の黄昏(たそがれ)がとっくに夜に飲み込まれた十九時過ぎ。定時で仕事が終わった私は、オフィスビルが集中して立ち並ぶビジネス街から少し離れた歩道に立っていた。

 冷ややかな風に、道路に落ちた木の葉が舞う。思わず身震いした私は、スーツの上に着たトレンチコートの襟もとを頬に寄せた。

 さっき仕事が終わったって連絡があったから、もうそろそろだと思うんだけれど。

 ふと見渡すと、スーツ姿の人影を認めた私は高らかに声を上げた。

「理人さん!」

 それと同時に、こちらに向かう人物へと駆け寄る。
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