嘘恋のち真実愛
演技の一環
モヤモヤしながらも、何もされなかったことに安心して寝た私は、夢を見る。

誰かが『ゆりか、ゆりか』と私を呼ぶ。誰だろう、あの人……。夢の中に出てきた男性の顔を見るが、眩しくてよく見えない。私は、どんどん近づき、彼の頬を両手で押さえた。これなら、きっとよく見える……。

ほら、見せて。


「おはよう」

「えっ……わっ! あわわ、ごめんなさい!」

「ちょっ、ゆりか、危ない! 落ちるよ」

「えっ、あ……」


振り返って、床を見た。征巳さんに腕を掴まれて、自分がベッドの淵まで後退りしていたことに気付く。あと少しで落ちるところだった。

夢の中で私を呼んでいたのは、征巳さんだったのか……夢ではなく現実だったけど。寝ぼけていたのが、恥ずかしい。


「ゆりかを起こしてたら、いきなり顔を押さえられるし、慌てて落ちそうになるし、朝からビックリさせられて楽しいね」

「えっ、楽しい?」

「うん、素のゆりかだから、楽しいよ。毎日寝起きの顔が見たくなるね」

「毎日って……ど、土曜日までですよ?」

「ゆりかの寝顔で毎日癒されたいな」
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