セレナーデ ~智之
それでも 智之は 携帯電話を持ったまま 躊躇してしまう。
麻有子は 彼と一緒に いるかもしれない。
食事をしようと言った時 快く答えたのは ただの社交辞令かもしれない。
まさか 本当に電話するとは 思っていないかもしれない。
負の妄想は 考え出すと止まらない。
大きく首を振って 勢いで 通話ボタンを押す。
やっと見つけた糸口だから。
これからの自分には 麻有子が 絶対に必要だから。