セレナーデ ~智之

麻有子と 会う約束までの二日間 

智之は 麻有子のことばかり 考えていた。


一緒に過ごした 時間のことから 再会するまでのこと。

今の麻有子が 何を思って どんな生活を しているのか。


出会えた喜びと 不安。


麻有子にとって 智之が 幼馴染み以上で なかったら。
 


「廣澤。その後 彼女とは どうなった?」

麻有子の会社に 同行した先輩に 聞かれる。
 

「明日、会います。」

素直に答える智之に 意外そうな目を向けて 


「へえ。積極的だな。」

と言う先輩。


社内で 人気があるのに 特定の人と 付き合わない智之。


もしかして 女嫌いかもと 噂されたこともあったから。
 


「はい。人生 賭けていますので。」

智之が 笑いながら答えると 
 
「大げさ。」

と先輩も笑った。


今まで 何となく 閉鎖的と思われていた智之が

素直に 心を開いていることにも 驚いていた。
 


家でも 母は 智之の変化に 気付いていた。


どこか上の空で でも 沈んでいるわけではない。


多分 好きな人ができたのだろうと 母は思っていた。



まさか それが 麻有子とは 想像もしていなかったけれど。
 
 


< 29 / 91 >

この作品をシェア

pagetop