〜トラブル〜 黒のムグンファ・声を取り戻す旅
第4話 過去

 ジョンの一言にメンバー達も、そうだと口々に言う。

 パク・ユンホは、うーんと腕を組み直し「どこから話せばいいかなぁ」と天を(あお)いだ。

「彼女との出会いは、ある才能豊かな若者と出会った事から始まる……」

 ゆっくりと言葉を選びながら話し出した。

「数年前、私はカメラマン養成所の講師を頼まれてね。その時、ある若者に注目した。その若者が撮る写真には、被写体が神に愛されているかのごとく幸せそうに写っていた。それが、風になびく雑草や、道端の一輪の花であっても、楽しそうに、幸せそうに写るのが不思議で、私はおおいに、その若者に興味を持った」

 パク・ユンホは水をひと口飲んだ。

「当時、私は、新人女優の写真集の依頼が来ていたのだが、コンセプトが私と違いすぎて断ろうとしていた。私は、彼なら最高の写真が撮れると事務所側を説得してメインカメラマンに指名した。写真集は評判となり、異例の売り上げを記録した。その女優は成功した」

 ノエルが「その写真集、実家にあります!背表紙がいいんですよねー」と言う。

 パク・ユンホは微笑みながら続ける。

「彼の成功を祝いパーティーが開かれた。彼は恋人を連れて来た。彼女はとても美しい人だった。看護師をしていると言った。2人は12月に婚約パーティーを開き、春に結婚する予定だと教えてくれた。皆が2人を祝福し、彼の写真が愛に(あふ)れているのは彼女のおかげだと、すぐに分かった」

 パク・ユンホはフーっと息を吐き、また、話し出す。
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