あやかしの集う夢の中で
雪女を倒せ!
(よし、当たる!)



愛理は雪菜の額に一直線に伸びていく電撃の矢の軌道を見ながら思った。



(電撃の矢が雪菜の額に当たれば、雪菜だって絶対に倒れるはず。

桜介の仇!

一撃で倒れろ!)



愛理の願いを込めた電撃の矢は雪菜の額に見事に当たり、そしてその矢は雪菜の額をすり抜けた。



愛理はその状況を驚きの中で見つめていたが、すぐに電撃の矢が雪菜の偽物に当たったことに気づき、本物の雪菜を探し始めた。



(本物の雪菜はどこ?

クッソー!

絶対に私が倒してやるんだから)



「フフフッ……。

フフフッ……」



雪菜の笑い声が粉雪が舞う幻想的な光景の中で響き、愛理の気持ちを逆撫でしていた。



桜介の女性に弱いという弱点をついて、桜介を倒した雪菜は卑怯だ。



それに桜介が夢妖怪である雪菜に少しでも心を奪われたというのが許せない。



愛理は憎き敵を倒すために雪菜の声がする方に目を向けた。



すると、そこには勝ち誇った顔をして笑っている憎らしい雪菜が立っていた。



愛理はそんな雪菜を込み上げてくる怒りの中でにらんでいた。



「随分と怖い顔をするのね。

少し頭を冷やした方がいいのかも」



「うるさい!

あんたなんかこの私が倒すんだから」



「負け犬の遠吠えね。

貴様の実力じゃ、この私は倒せない」



雪菜はそう言うと、両手を前に広げて、凍えるような冷気を両手から解き放った。
< 104 / 171 >

この作品をシェア

pagetop