あやかしの集う夢の中で
大切な人
愛理は舞の大切な夢の微かな明かりしか差し込まない薄暗い大地で、体温が下がった桜介の体を強く抱きしめ、桜介の体温低下を防ごうとしていた。



このまま桜介の体温が下がり続けたら、夢の世界に入り込んできた桜介の魂が消えてしまう。



愛理はそんなあってはならない状況を想像しながら、心の中で必死に桜介に話しかけていた。



(絶対に死んじゃダメだよ、桜介。

桜介はいい加減で頼りないけど、私の大切な人だから。

それにオカルト部のみんなも桜介のことが大好きだから。

舞ちゃんの大切な夢を救えたら、私たちはまたあの部室で一緒に紅茶が飲めるよね。

他の人から見たら何でもない時間に思えるかもしれないけど、私はみんなと一緒にいられるあの時間が好きだから)



愛理が放つ微量の電撃は熱を持ち、桜介の体を温めていた。



それなのに、桜介の体温はなかなか元に戻らない。



愛理は不安な気持ちを抱えながら、桜介が意識を取り戻すことを願っていた。
< 111 / 171 >

この作品をシェア

pagetop