愛艶婚~お見合い夫婦は営まない~
6. 旱の朝曇り



子供の頃、英語を学びたいと思ったことからいつしか英語教師が自分の夢になった。

他の国の人と繋がるきっかけづくりになれたらいい、そのために子供たちに英語を教えたい、と。そう思ったんだ。



バイトをしながら大学を出て、都内の中学校に就職が決まった私は、地元を離れひとり暮らしをすることにした。

夢のためとはいえ地元を離れるのは寂しい。だけど、この街で立派な英語教師になるんだと覚悟を決めた。



……はず、なのに。

結局、あの街にも私の居場所はなかったのだと思い知るだけだった。





ある日の夜。

夕食後の食器洗いを終えリビングのソファに腰かけたところで、スマートフォンがピコンと鳴った。



なんだろう、と画面を見るとそこには一通のメッセージ。

送信者のところには『唯ちゃん』の名前が表示されている。



唯ちゃん……久しぶりだ。

彼女は大学時代からの付き合いで、同じく英語教師となった友人だ。

学校は違うけれどお互い赴任した学校も隣の学区だったので、就職後もたびたびごはんに出かけていた仲だ。



唯ちゃんは今もまだ都内の学校で勤務しているはず。どうしたんだろう。

不思議に思いながらメッセージをひらくと、そこには久しぶりの挨拶と『今度の土曜日久しぶりにランチでもしない?』という内容がつづられていた。



そういえば、彼女には辞めるときに電話で話をしただけで直接話はできていなかったんだよね。

ようやくいろいろ落ち着いたことだし、久しぶりに会ってゆっくり話したいかも。


  
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