あの滑走路の向こう側へ✈︎✈︎✈︎

九、楽屋口で




夢のようなステージは終わり、
茉莉奈は楽屋口に向かってみた。

するとそこには、
プリンシパルの屋敷慎一郎の出待ちの
ファンたちが並んでいた。

一瞬、茉莉奈は怯んだが、
その末席らしき所に立ち、待つ事にした。

屋敷慎一郎が王子のように颯爽と出てくると、
黄色い歓声が沸き起こり、
王子は歓声の主たちの前に立ち止まり、
順にプレゼントを受け取っていた。

茉莉奈は慌てて一歩下がった。

王子は全てのプレゼントを受け取ると、
軽やかに車に乗り込み、
出待ちのファンたちも去って行った。

ポツンと茉莉奈が取り残されていると、
楽器をかついだ団員たちがちらほら
楽屋口から出て来ては去って行った。

しばらくすると、若い団員たちが
数人出て来た。

その中に航はいた。

「航さん」

茉莉奈が声をかけると、航が立ち止まった。

「あれ、茉莉奈ちゃん? 啓輔の妹の!」

「はい、お久しぶりです」

「見に来てくれてたんだ。啓輔に聞いたの?」

「いえ、偶然です。
 私、転職して、今東京に引っ越したんです。
 自分へのご褒美にバレエ見に来たら、
 パンフレットに航さんの名前が載っていたから」

「立ち話もなんだから、どこか入ろうか?
 もし、時間大丈夫なら」

「あ、大丈夫です」


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