冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい
甘い口封じ


「ランシュア様、とってもお綺麗です。これで夜会の準備はバッチリですね」


アルソート国の城の一室。私は今、身の丈に合わない高級ドレスを身につけて鏡の前に立っている。

この城に戻ってきてから早一週間が経った。

門をくぐると、エルネス大臣をはじめ多くの使用人が出迎えてくれた。再び専属メイドを任されたカリーヌは喜びが爆発したようで、今も隣でニコニコしている。

そして、なぜこんな格好をしているかというと……


「よく似合ってる。やっぱり青いドレスにして正解だったな」


優雅に腕組みをしてこちらを眺めるのはレウル様である。全ては彼の一言から始まったのだ。


『ランシュア。来週の夜会、一緒に参加してくれない?』


城に戻ってすぐ告げられたセリフはそれだった。

夜会とは、国中の人々と王族の交流を目的に開催されるパーティーだ。毎月地方ごとローテーションするように招待状が配られ、全国民が満遍なく陛下と対面できるのである。

この催しが始まった理由は革命以前の独裁政治を禁忌とする考え方が根本にあり、レウル様は少しでも国民に寄り添おうと直接関わりを持つ機会を多く設けてきた。

私の政略結婚も、リガオ家の当主デーネさんが前回の夜会でエルネス大臣に話を持ちかけたことがキッカケだ。

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