ウブで不器用なお殿様と天然くノ一の物語
ヘタレなお殿様の回顧録
俺、廣澤彬良(ひろさわあきら)は26歳。
大学病院で研修医を終え、すぐに実家である廣澤総合病院に入職した。

元々廣澤総合病院は臨床研修指定施設だったため、最初から研修医として入っても良かったのだが、そこは甘えが出ないように、大学病院にお世話になった。

廣澤総合病院は父、廣澤信一郎が院長を務める。
母は結婚してからずっと専業主婦だ。
元々、県会議員を代々務めている家柄のお嬢さん。一度も働いたことはない。
もちろん、見合いで結婚したが、父との仲はかなり良い方だと思う。

俺には兄が1人いる。
廣澤修司、32歳。
結婚を機に実家に戻り、廣澤総合病院の外科に所属している。専門は小児外科。
元々器用な手先を活かし、若くしてオペの評判はすこぶる良い。
先日、結婚したばかりの新婚さんだ。

義姉の麗さんは、小児科医。
アラサーとしておこう。
現在第一子を妊娠中。
背が高く、スレンダーで、とても綺麗な人だ。

兄は昔から要領が良く、名門私立の中高でサッカーを続けながらも成績はキープし、一浪の末、公立大学の医学部に入学した。

この、“一浪”というところ。
俺自身の受験歴に重なる。

< 16 / 158 >

この作品をシェア

pagetop