離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
離婚予定日三か月前
◆◇◆


 私がこの会社に大学の先輩の紹介で来た時の状況といったら、そりゃあもう酷いものだった。

 当時、私は大学を卒業したばかりで、内定していた会社に四月から入社することになっていた。ところが直前になって、会社は倒産。慌てて就職活動を再開したが、すっかり時期を逃してしまいとりあえず派遣会社に登録をしようとしていた時、先輩から連絡があった。

 就職先を紹介してくれるという、その話に飛びついたのは言うまでもない。

 システム開発、アプリ開発を手掛けインターネット広告などのウェブ方面へ手を伸ばし始めている、まだ数年しか経たない小さな会社だった。

 同じ大学の仲間同士で起業して、先輩もその中のひとりだったらしい。しかし、急遽結婚退職することになり、自分の代わりになる人間を探していて私に白羽の矢が立った。

 それにしたって、妊娠してもすぐに退職する必要はないだろうし、それにしては早く引き継ぎをして欲しそうだ。ちらりとそのあたりを不思議に思ったが、その理由は誰に教えられる必要もなく身をもって知ることになる。

 先輩に連れられて面接に赴けば、なんといきなり社長に紹介されて驚いた。

 ……あ。この人、知ってる。

 同じ大学の卒業生だとは聞いていたけれど、まさか知った顔だとは思いもよらず。一瞬動揺してしまった。といっても、向こうはもちろん私のことなど知らない。一方的に、私が彼の顔だけを覚えていただけだ。

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