寵愛紳士 ~今夜、献身的なエリート上司に迫られる~

「あ! おはよう雪乃ちゃん! 今日はいつもより遅いんだねぇ」

さらに皆子が後ろからやってきて、雪乃の肩を叩く。

皆子を振り返って「おはようございます」と挨拶を返した後、視線を前に戻す。

すると、驚いた顔でこちらを見ている晴久がいた。

(あっ……)

雪乃は思わず凍りついたが、苦笑いで会釈をする。
どうしてキミがここに、晴久の顔にはそう書いてあるようだった。

晴久が雪乃になにか言う前に彼は同僚の男に「高杉さん」と呼び止められて応対したため、ここでふたりが話すことはなく過ぎていく。

雪乃は皆子とともにエレベーターに乗り、総務部のフロアへ。中の人が徐々に降りて減っていき、皆子とふたりきりになった途端、彼女は興奮気味に口を開いた。

「雪乃ちゃん見た? さっきうちらの前にいた人。あれが営業部の課長だよ」

「……高杉さん?」

「そうそう。高杉課長! いつも話してるでしょ、超イケメンのデキ男って。朝から見られるなんて今日はついてるよ。実物は本当にイケメンだよねぇ。モデルみたい」

雪乃もウンウンとうなずいた。

今まではまったく興味が持てなかったのに、噂の課長があの晴久だと分かると一気に魅力的に見え、女性社員が騒ぐ気持ちが分かった。
< 56 / 247 >

この作品をシェア

pagetop