病んでる僕と最強の勇者たち
ついに現れたモンスター
僕たちのパーティはベルミータ国を支配する闇の魔王、ダーギルを倒すためにベルミータ国へと急いでいた。



そして、そんな僕たちのパーティは、その高すぎるステータス故に、モンスターたちを寄せつけなかった。



僕には僕たちに決して近寄ろうとはしないそんなモンスターたちの気持ちが、わかるような気がした。



だって、LV99の勇者、魔法使い、剣士、そして賢者に立ち向かうことは自殺行為だ。



強い意気込みの中で始まった僕たちの冒険は、あまりにも平和過ぎた。



そして、その平和過ぎる冒険に飽き始めたリリーが、セクシーなそのボディで大きく背伸びすると、僕たちに話しかけてきた。



「なかなかモンスターが出てこないね。

何だか退屈だなぁ。

モンスターたちはリリーの魔法に恐れをなして出てこないんだもん」



「それはちょっと違うぞ、リリー」



ブライアンはそう言って、リリーの言葉を否定し出した。



「モンスターたちはな、オレの剣を恐れて出てこないんだ。

なんたってオレは最強の勇者だからな」



「違うよ、リリーの魔法だよ」



「オレの剣だって」



「リリーの魔法!」



「オレの剣!」



ブライアンとリリーはまた小さな言い争いを始め、マギーはそれを呆れながら見ていた。



そして僕たちの平和だった冒険に、ようやく冒険らしい変化が訪れた。



黒い雲が空を覆っている闇に包まれたベルミータ国が見えてきたのだ。



そしてブライアンは真っ黒な空を見上げると、真顔でポツリとつぶやいた。



「ベルミータ国の空をこれほどの黒い雲で覆うなんて、ものすごい魔力だぞ。

闇の魔王、ダーギルはかなり手強いぞ」



いつもカッコつけながらお茶らけているブライアンがたまに真面目な話をすると、やけに信憑性があって、僕は闇の魔王、ダーギルの強さを感じていた。
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