氷の美女と冷血王子
意外な再会
翌日、朝まで何件かはしごをした俺は重たい頭を抱えながらいつも通りに出社した。

俺の勤める鈴森商事は4代前の爺さんが興した会社で、企業向けに色々な商品を扱う総合商社。
起業時のモットーが『ゆりかごから墓場まで』だったそうで、需要があればどんなものでも用意する。そうやって今では上場企業の仲間入りをする会社になった。
必死に会社を興した初代。
時代の波にもまれながらも会社を守り抜いた2代目。
培ってきた信頼は守りながらも新しい分野を開拓しようとした3代目。
企業としての土台を堅固なものとし、一流と言われるまでに大きくした4代目である父さん。
俺にはその先輩達からこの会社を引き継ぐ責任がある。
体調不良を言い訳に、仕事に穴を開けるわけにはいかない。

ブブブ。
ん?
仕事用の携帯か。

「はい」
「おはようございます、皆川です」
「ああ、おはようございます」

掛けてきたのは事業部長の皆川さん。
今はアメリカにいるはずの彼が、こんな時間に掛けてくるってことは良くないことだよな。

「どうかしましたか?」
「ええ、アメリカの空港へ向かっていたトラックが事故を起こしまして、商品の到着が遅れそうです」
「どこの荷物ですか?」
「それが、山通でして・・・」
フーン、
なるほど。

山通はうちの上得意先。
今運んでいた荷物も、俺がアメリカ時代に手がけた商品のはずだ。
だから、わざわざ俺に連絡してきたのか。よほど困っているってことだな。
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