愛を孕む~御曹司の迸る激情~

_よみがえる記憶


 成宮さんとバーで過ごした日から、一週間が経った。会社での私たちは、ただの上司と部下の関係。パリ支社立ち上げメンバーの一員として、同じ空間で働くものの、それ以上の話をすることはなかった。


「蕪木、これとこれなんだけど、今日中にまとめられる?」

「はい、大丈夫です。」

 私たちはそれぞれの部署を離れ、新規事業部として新しいデスクを借りて仕事をしていた。ここでの私の主な仕事は、現地に出すニュースリリースの作成や様々な翻訳業務。

 成宮さんから与えられた仕事をこなす毎日だった。


「あー、そうだ。昨日頼んだ方は後回しにしちゃっていいから。そっち優先で。」

 成宮さんはそう言い残し、いつものことながら忙しなく自分のデスクに戻っていく。ここに来てから、仕事をしている彼の姿を間近で見られるようになった。

 そんな彼はやっぱり仕事人間で、思わず笑みがこぼれた。


 私は引き出しから取り出したファイルを手に、成宮さんのデスクに向かった。そして彼の前にそっと置くと、少し驚いたように私を見た。

「昨日の資料ならもう終わってます。」

 そう言った瞬間、成宮さんはファイルを手に取りながら、フッと笑う。


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