ピンポーン。

日葵が美暖に母乳を吸わせながら、ウトウトとソファで寝落ちしていた時、突如、玄関のインターホンが鳴った。

「日葵は寝てろ。俺が出る」

すかさず仕事用のデスクのチェアから立ち上がった陽生が、慌てて起き上がろうとした日葵を遮って言った。

「ごきげんよう、日葵さん、美暖ちゃん。元気にしてた?」

陽生が玄関に向かおうとしたその瞬間、リビングについ最近聞いたばかりのハイトーンボイスが響き渡った。

「お母さん・・・どうやって中に?」

「・・・勇気くんとお義父さん、毬ちゃんも」

陽生だけでなく、立ち上がった日葵も、突然現れた真島家の面々に驚きを隠せない。

「勇気さんに合鍵を持たせてたでしょう?返せって言われなかったらしいから私が預かってたのよ」

真佐子のドヤ顔に、陽生がジロリと勇気を見つめた。

「み、美暖ちゃん、会いたかった。今日も一段と可愛いね」

慌てて陽生から目を反らした勇気は、一目散に日葵に抱かれる美暖の元へ駆けていった・・・いや逃げたというべきか。

「来るなら来るって連絡ぐらいくれたらよかったでしょうに」

「あら、今日は引っ越しの挨拶に来たのよ。遊びではないわ」

「引っ越し・・・?僕は聞いてませんが」

「そうね、言ってないもの」

陽生と真佐子の言葉のキャッチボールは、さすが親子といった感じ・・・

゛っておい、今、なんつった?゛

日葵には、陽生の心の声が聞こえた気がした。

もしかしたら、

もしかしなくても、

そう、このところ近所で聞こえていたあの工事の音・・・。

それは、

゛真島家、売れない中古住宅をリフォームして愛孫のご近所さんになろう゛

の計画の一環・・・

だったらしい。