「あれ?ない・・・」

イケメン玲音絡みのトラブルが本格化したのはその日の放課後だった。

下校するために下駄箱に向かった美暖だったが、自分の下駄箱に履いてきたシューズがないことに気づいた。

誰かが間違えて履いていったのかもしれない。

でも、それならその子の上履きが残っているはずだ。

美暖は、念のため、1年生の靴箱をくまなく探してみた。

それでも、どこにもない。

困った美暖は、しばらく立ち尽くしていたが、ふと視線を感じて目をやると、上級生らしき女子数名が、美暖を見て笑っているのが見えた。

『いい気味』

『調子に乗るからよ』

ボソボソと呟く声から、このことが玲音絡みで妬まれて行われたイタズラだと悟った。

ため息をついた美暖は、隠されたシューズを探すのは諦め、上履きのまま帰宅することにした。

学校に慣れない1年生は、入学してしばらくの間は給食を食べずに午前中で帰宅する。

上級生の玲音は六時間授業なので、玲音にばれて大騒ぎになる可能性は低い。

シューズを探すことを早々に諦め上履きで下校を始めた美暖に、靴を隠したと思われる女子達は虚をつかれたかのように唖然としていた。

しかし、その直後

「やだ、あの子、靴も買って貰えないのかしら。上履きで帰るなんてみっともない」

と大声で笑っている女子の声が美暖の耳にも聞こえてきた。

゛言ってろ゛

1年生とは思えない美暖の表情は面白そうに笑っていた。

゛やられたらやり返す、倍返しだ゛

どこかのドラマや小説のようだが、それがリアルに真島家のモットー。

もしもこのことが父である陽生や祖父母にバレたらどうなるか・・・。

美暖は想像してほくそ笑みながらも、本当のところは言わずにいた方がよいのではと躊躇もしていた・・・。