「まあ、まあ、美暖ちゃん、どうして上履きを履いているの?この間買ってあげたおニューのシューズがあったでしょう?」

校門から少し離れたところで待っていた祖母・真佐子が美暖の足元を見て慌てて言った。

「なくなってたの。だから仕方なく上履きで出てきた。裸足では帰れないでしょう?」

目に涙を浮かべてウルウルさせれば完璧だ。

真佐子の目に怒りが込み上げてきているのが美暖にはわかった。

「心当たりはあるの?」

「うーん、たぶん」

誤魔化すフリはしてみるものの、美暖はあの傍若無人な上級生達を見過ごす気は毛頭ない。

「戻りましょう。学校に戻って状況を把握しないと」

「ううん、今日はいいや。帰ってからパパとママにも話したいし、じいじにも聞いてほしいから」

美暖の言葉に、真佐子が瞳をウルウルさせて頷く。

「そうね。急いてはことを仕損じるというものね。美暖ちゃんが賢くて安心したわ」

感情的な祖母よりも、温厚ながら部下に恐れられている祖父や、日葵命だが美暖のことも同等?に大切だと思っているであろう父に相談する方が効果的だと、子供ながらに美暖は悟っていた。

母・日葵は論外だろう。

母が怒ったり怒鳴ったりしているところを美暖はみたことがない。

のんびり屋で、仕事以外は警察犬の柊とまったり過ごすことを心からエンジョイするような女性だ。

美暖は、自分は手を下さずに大人に解決してもらうことに何の抵抗もない。

だって子供に子供が何を言っても、わかってもらえるほど相手は大人になっていない。

策士な真島家の面々に育てられた美暖は、若干、いやかなり計算高い?子供に成長しつつあった。