「ねえ、陽生さん、日葵さん。聞いてほしいの」

真島家に帰宅すると、真佐子は開口一番、玄関まで出迎えにきた日葵と陽生に、美暖が上級生にされた(と思われる)ことを語って聞かせた。

「へえ、それで、美暖は黙ってやられて帰ってきたのか」

陽生の言葉に、美暖はグッと奥歯を噛み締める。

゛また、だ゛

陽生パパは美暖には何故か厳しい。

幼稚園に入園した頃から

真島家の娘なら強気でいけ、と行事の度に発破をかけられてきた。

゛パパは美暖のこと、ママほど大切じゃないんだ゛

薄々感づいていた事実を実感させられて、美暖が不貞腐れていると

「陽生さん、美暖はまだ小学1年生なのよ。上級生に歯向かえるはずなんてないじゃない。私が先生に話してくる」

日葵ママが激しい口調で陽生パパを責めている。

こちらはさして珍しい場面ではないのだが、逆はほとんどあり得ない。

美暖の味方をしてくれた日葵ママに、美暖は嬉しさを隠そうとはしなかったが、後で陽生に何か言いがかりをつけられるのではないかと、美暖は内心ビクビクしていた。