不本意ながら、極上社長に娶られることになりました


 自宅からほど近い私立大学の学食で、母親は朝から夕方までパート勤務をしている。

 その後、父親が入院している病院へとお見舞いに行くのが、ここのところの生活のサイクルだ。

 会社員の父親は、現在病気療養中。勤めている会社を休職し、三か月ほど前から入院している。

 もともと持病であった心臓疾患が悪化し、ほとんど緊急という形で入院という運びになった。

 それからというもの、この家には母親と私が二人暮らしをしている。

 なんとなく流している朝の情報番組を目にしながらカフェオレを飲み終えると、二階の自室へと向かいメイク用の鏡を覗き込む。

 毛先を中心に緩く巻いた、いつも通りのロングヘアスタイル。

 たまにうっかりアイブロウを忘れてしまうことがあるため、前髪を持ち上げてチェックをするようにしている。

 最後に最近購入したお気に入りのリップを薄く引き、唇を重ね合わせた。


「……忘れ物は、ないよね」


バッグとトレンチコートを掴み、小走りで階段を下りていく。

ダイニングテーブルに置いておいた自分のお弁当をバッグに突っ込み、玄関へと向かった。

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