不本意ながら、極上社長に娶られることになりました


 ひとつだけの巨大なベッド。

 この新居には、間違いなくこの場所にしか眠りにつけるベッドはない。

 私の部屋にも、桜坂社長の書斎にも、個人的に眠れるベッドは置かれていないからだ。

 あの桜坂社長と、同じベッドで一緒に眠る……。

 鎮座するベッドをじっと見つめ、その光景を想像してみるものの、全く想像がつかない。

 まだ出会って間もない同士がひとつのベッドで眠るということ自体がおかしな話で、どんな状況なのかなんて想像してもわかるはずもなかった。

 私が思うように、桜坂社長だってきっと同じだと思う。

 一緒に眠るとするなら、端と端でお互いに背を向けて、まるでひとりのように眠るのだろうか。

 そもそも、桜坂社長がこの部屋を使わないような気もしてくる。

 仕事で忙しく、あまり帰宅しないということもあるかもしれないし、心に決めた想い合う相手がいるとすれば、許婚といえ私と寝起きなんてはっきり言ってごめんだろう。


「ハァ……」


 考えれば考えるほど、様々な心配に気が滅入ってきてしまう。

 今はもうこれ以上考えるのはやめようと、寝室の扉をあとにした。

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