前世が猫の公爵は令嬢に撫でられたい
閑話 初夜
ルーカスに初めて会った夜会からわずか半年後、オリビアは公爵家に嫁いだ。辺境伯家と公爵家の婚姻は、社交界を驚かせた。

ただ、オリビアは思う。一番驚いているのは自分だろうと。

公爵家からの縁談の申し込みに、ノース家は騒然となった。父に何があったと問われても、オリビア自身もよくわからない。ただ、なぜか夫となるルーカスが自分に好意を抱いてくれているということだけは理解した。


今、オリビアの隣には無事に夫婦となった夫が同じように横たわっていた。結婚式も初夜も済ませ名実ともに夫婦になったのだ。

『夫に全てまかせなさい。』初夜についてオリビアが尋ねた時、母はそう答えた。が、任せるにしても、何をするかくらいは教えて欲しかったものである。

壁画に描かれている天使より綺麗な夫に、『綺麗だ』など『愛してる』など囁かれながらの初夜を終えたオリビアは、精神的にも肉体的にも体力はほぼ残っていなかった。

これに慣れる日が来るのだろうか。少し不安になったオリビアは、隣の夫を見つめた。夫もこちらを見ている。綺麗な顔だなと思っていると、何やら夫はモジモジし始めた。

『可愛い。』

その一言に尽きる。これだけ綺麗な顔だと、成人男性であるにもかかわらず、モジモジしても可愛いのだ。新しい発見である。

「オリビア。」

「何ですか?」

「その、一つ願い事があるのだが。」

「願い事?何ですか?」


オリビアが聞き返すと、夫はまたモジモジしはじめた。そして小さな声で言った。

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