公開告白される君と3日間の旅 ~夏休みは境界

コイン落とし



『ドドンガドン♪~ドンドンガ』

小学校の 運動場である 『夏祭り』は、子ども会が 仕切っているから、屋台テントは 保護者が 交代でやってる。

「コイン落としやりませんかー!」

ユキノジョウは、ユリヤとアコの3人で 店番。
3人とも浴衣に着替えてる。

ユリヤの母、副女さんは
会長と本部テントや、
来賓への挨拶周りに行ったし。

役員は、自分の子ども会屋台の
手伝いにまずは行くし。

事務さんは、校長と教頭の
相手に出る。

店を守りながら、ユキノジョウは、呼び込みの係をするのも
毎年のお約束。

『うお!今年も コイン落としあるぞ!4回する!』

コイン落としは 毎年人気なのだ。
4年の男子が、サイフを出す。

「コイン2枚20円だから、40円でーす。むずかしい方にする?」

ユキノジョウの妹、
4年のアコがお金の係。

子ども会が祭を、 仕切るだけあって、どの 屋台テントも 値段が
安い。

周辺の学校や公園、神社でも祭は
あるけど、うちの学校が1番安い。

『決まってっだろ。むずかしい方 やる!』

4年男子が、張り切ってるなあ。
あれ?こいつ、アコのクラスの男子か?

「4回出来るもんね。がんばれー。」

アコが 4年男子を応援してる。
そーだ。こいつ、アコのクラスだ。

もう、見たことない生徒いるし。
他校生が 多くなってきたな。
ユキノジョウは、運動場をみる。

『あー!ダメか!』

社協さんや、テキヤさんが
屋台をすると、値段は こんなに
安くないから、
他の小学校からも 祭だけは、
学校をまたいで来るぐらいの
安さなのだ。
だけど、今年は多い。

「ザーンネン。あと3枚!がんばれー」

ユリヤから、
コインを4枚 渡された男子は、
ブクブクが入った 水槽を横から
にらんで、コインを上から
ドンドン落とす。

『くそー!!ぜってー入れる。』

ブクブクに あおられて、
コインは目指す グラスから
またも外れて落ちた。

そんな中で、別の男子の声がする。

『おー、あったあった』

『ここのテントから 回るのがツウだよなー』

1人並び始めたら、
次の白線に 子ども達が並ぶ。

今回から、並ぶ地面に、
白線を引いた。近寄らないで、
並べるように。

「大人気!コイン落とし、やりませんかー!!」

いつもPTAの屋台テントは、
『コイン落とし』。

残念賞は、駄菓子。
グラスにコインが入ると、
1枚タコセンと クイズが渡される。
このクイズ宝探しが、みんな目当てなのだ。

『屋台まわりながら、クイズやるのが、効率いいよな。』

うちの夏祭りの名物に
なっているクイズは、
ユリヤが作ったやつ。

1問解く答えが、
次のクイズがある場所。

夏祭りの 学校を
宝探しみたいに、クイズで回ると、景品が早い者勝ちで
10人だけ もらえる。

お化け屋しきの 時間もあるから、
それまでに 半分まわるのが、
クリアの条件になる。

「おめでとーございまーす!!タコセンと、宝探しクイズの1問目でーす。」

最後で 4年男子は、
とうとう成功したみたいだ。
ユリヤが クイズの紙を渡した。

そしたら、後ろから浴衣姿の
監査女さんの声した。

「店番交代しますよー。3人とも有り難うね。」

すると、
今 成功の景品になる
クイズの紙を手にした 4年男子が
アコに、それを見せて、誘った。

「監査女さんて、いい感じにくるねー!じゃあ アタシ行ってくるー。」

アコがサイフを持って、
さっきの4年男子と
一緒に出ていく。

遊びは、最高 50円まで。
食べ物は 高くても 300円まで。
野球部のお父さん達屋台が、
焼き鳥で1番高い300円。

くじ引きは、アイドル屋台が
1番高い300円。

『ドンドンガドン♪~ドドンガ』


「監査女さん。アコとさっきの男子のこと、」

ユキノジョウは、ニコニコする
監査女さんに探りを入れてみる。

「ユキノジョウくんの助けにもなるでしょ?」

監査女さんが、
コインを次の子に渡しながら、
目でユリヤを指した。
ユリヤは、アコの代わりに
お金の係を始めている。

「・・・」

ユキノジョウは、だまって
駄菓子を 目の前で残念がる、
子どもに 渡しつけた。

「それに、あんまり自分のとこの屋台いるのも疲れるんよ。まあ、今年は 鼻血は出さなくて、いいみたいやけどね。」

そう 運動場や、本部テントを
見て、監査女さんは肩をすかした。

でも そういいながらも、
監査女さんが、ユキノジョウの斜め上を見ているのを、
ユキノジョウは見つけてしまう。

「何?」

「そろそろ お母さんくるな。そしたら、アコちゃん捕まえて、先に3人で屋台回っとけば?花火も見るんならね。」

「花火、見れるん?!」

ユキノジョウの問いに、
監査女さんが、しまった顔を
して、次の女子にコインを渡す。

「ナイショやよ。」

口に指を立てて、シーっのポーズをされてしまった。

でも 相変わらず、たまに並ぶ
子どもの 斜め上を見ていて、
こわい。

『ドドンガドン♪~ドドンガ』


「おう、オカルト娘。今日は鼻血出してへんかー?」

後ろから声がして、
見たら 事務さんだった。
事務さんは、ユリヤに 交代する
からと、ユキノジョウとユリヤに
たこ焼きをくれる。

まとめて10パックはある。

「ユリ、たこ焼き 食べようぜ。」

ユキノジョウは 除菌薬を手に
もんで、事務さんから渡された 、
たこ焼きの1パックを開ける。

そして、フタに半分だけ
たこ焼きを入れて、 割りばしと
一緒に、ユリヤに渡した。

「ユキ君、クラスの子達と回るん?」

ユリヤが 半分っこの たこ焼きを、モグモグして聞いてくる。

ユキノジョウは、
浴衣で モグモグしとるなあと、
見ながら

「そろそろ、母さん来るみたいやからな、アコと先に回ってからクラスのやつらと回る。ユリは、クラスの女子が迎えに来たら、回るんやろ。」

ユリヤは『うん』と、
うなずいて、
もう1つ たこ焼きをほおばる。

ユキノジョウもそうだけど、
ユリヤも 美味しいモノに
目がない。

母親が役員をするようになって、
挨拶周り品の あまったのや、
差し入れで、
確実に 美味しいモノセンサーが
スキルアップしているて思う。

『おう!やったやん。成功したから、タコセンと クイズな!』

『おめでとー』


『あそこ』に行けば、
珍しいモノがあると、
思われるのは 大事だと、
事務さんは いつも言ってる。
お手伝いの参加率になるとか。

いつもなら 他校地域の夏祭りが
日にちをずらしてあるから、
もっとたくさん 陣中見舞いの品が 上の部屋には積まれる。


「ユキ君、クラスの子達きた
から、回ってくる。」

「ん。」

ユリヤは 同じ6年の 女子達の
後ろに、くっついて行った。

本当は、このテントにいて
くれると、
安心できるんだけどと、
ユキノジョウは思う。

今年は、ヤグラの下の
盆踊りの輪も大きい。
このあたりで、今年 夏祭りを
するのは、うちの学校ぐらいだ。

他校の やつらだと、
ユリヤとシンギの事を 知らない
から、へんなやつが 出てくる
かもしれない。

『ドドンガ♪~』

そういえば、子ども会が
仕切ってると、ウイルス対策とか、厳しくなった
保健所のルールに合わせるのが
やりやすいからだと
会長も話てた。

「はー。ようやく休憩や。これ、うちの焼き鳥、差し入れ。」

副男会長こと、
副男さんが 1番高い屋台の
焼き鳥を10パック持って
やってきた。

さっきまで、副男さんは
門にいてたはずだ。

今年から 門で 夜回り組が、
参加する人の体温を、
測るようにもなった。

もしも、他校からの参加が
多すぎるなら、規制すると
事務さんに、話ている。

『わあ、あんた、また鼻血出てるやん。ちょっと、ユキノジョウ!そこのティッシュの箱とって!』

事務さんの騒ぐ声で、
ユキノジョウは、
たこ焼きのパック横にあった、
ティッシュを持っていく。

「監査女さん、後ろ座り。僕かわるわ。」

副男さんが、
コイン落としの係を引き継いて、
監査女さんにクーラーボックスの保冷剤に タオルを まいたやつを
渡した。

「監査女さん、大丈夫?」

ユキノジョウが 心配で声を
かけると、監査女さんが、
鼻の血をティッシュで
ぬぐいながら、

「ありがとう。ユキノジョウくん、お父さんて、彼女いるやろ?今、その女人、来てるわ。」

監査女さんは、
保冷剤入り タオルを 頭にのせて、
ユキノジョウを 見つめる。

「彼女?仕事場でアシスタントしてるお姉さんやろ?お姉さんなら知ってる。で、なんで来てるん?」

ユキノジョウは、最近
父親を車に乗せて来た、
女の人の事を 思い出して 答えた。

「たぶん、お母さんと話する ため。ナイショな。」

ユキノジョウは、なんとなく
分かっている。
母親は5年になると、
父親と 別居を 始めたから。

「それで、鼻血出たん?」

「ちゃうよ。ちょっと意外な人の子どもさんが、意外な人の子どもやったから。びっくりして。」

監査女さんは、ゆっくり顔を
本部テントに向ける。
あそこには、お偉いさんや、
来賓がたくさんいて、
ユリヤの母、副女さんが
挨拶と接待の お手伝いを
している。

なんでも、演歌歌手さんが
有志で 音頭歌を 歌う、といってた。


「監査女さん、なんか、言ってる事が いつもよりへん。」

「意外な人が『フリン』して、の子どもさんがいるって事で、あまりわからんでいいよ。」

監査女さんは、
人が見えないモノが見える。

だから、隠し事ができない。
目の前に立てば、
校長だって、
議員だって関係ない。

「・・・うん。オレのとこも、何か あるみたいやし、わからんでいい。」


『残ねーん、はい、駄菓子ー』


副男さんの声がした。




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