異世界で女嫌いの王太子に溺愛されてます。
SIDE ルイス / 異世界から来た者
今朝早く、騎士達が昨夜助けたというユーリという女について、ブラッドが報告してきた。見慣れぬ服を身に付け、聞き慣れぬ日本という国から来たという。それも夢の中で犬に導かれて、気付いたらここにいたと……

騎士団長ともあろう者が、らしくない報告を上げてきたことに苛立ちを覚えた。しかし、彼は至って真剣に語ってくる。
そこで〝異世界〟という言葉がなぜかひかかった。

異世界……そんな馬鹿げたことがあるわけないと思って、気にも留めてこなかったが、確かに、王家にまつわる書物に、そんな記述があったはずだと思い出した。

名も無いその書物は、王家の始まりからこれまでの歴史をまとめたものだ。幾度となく争いを繰り返し、時には疫病に悩まされながら国が移り変わっていく様が、その時の王室の内部事情とともに詳しく書かれている。
この書物は、戦の業火に巻き込まれながら、奇跡的にも難を逃れ、今この時も語り継がれている。その時々の最も信頼できる側近の1人が、秘密裏に書き足し、現在進行形で紡がれているのだ。

「一度、読み直してみるか」

数冊にわたる書物の、どこにその記載があっただろうか……探すには骨が折れそうだが、念のため見ておきたくて、急いで仕事を終えて書物を取り出してきた。


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