一夜の艶事からお見合い夫婦営みます~極上社長の強引な求婚宣言~
彼に振られるための方法


遠い意識のなか、心地良い振動に包まれていると気づく。ゆっくりと覚醒していくうちに、それが車の揺れなのだとわかった。
あまりの気持ち良さに目を開けるのはもったいないような気がして、そのまま身を委ねる。

でもどうして車になんて乗っているのだろう。ふと、そんな疑問が沸く。

拓海に宣戦布告して、そのまま飲み比べのような形になったのは覚えている。それでどうして車なのか。

そっと薄目を開けると、真っ先に視界に入ったのは細かい千鳥模様の水色のネクタイだった。ゆっくりと視線を上げていく。すると、そこでバッチリ合った視線の持ち主を確認して、実花子は自分の状況をはじめて知った。

あろうことか、拓海にもたれて眠っていたのだ。しかも、包まれていたのは心地良い振動どころではなく彼の腕だった。


「やっと目が覚めたか」


記憶がある時点で、拓海はカクテルを六杯、それからウイスキーのボトルを出してもらっていたはず。ついさっきまで大酒をあおっていたとは思えないほど涼しげな笑顔。それはまるで、夕暮れ時の海辺で爽やかな風にでも吹かれているかのようだった。

実花子よりお酒が強いとは、いったいどれだけ酒豪なのか。

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