夜、小説を書きながらキーを打つ手が止まる。

……なんか、いままでになく調子よくない?

いつも、溺愛彼氏なんてなにをするのかわからない、なんて悩みながら書いていたが、要するに蔭木さんが私にすることをそのまま書けばいいのだ。
ヒロインの気持ちも手に取るようにわかる。
これは、……もしかして、もしかする?

「よし、頑張るぞー!」

今朝、また海外へと旅立った蔭木さんは、一週間ほど帰ってこない。
その間に書き上げてしまおう!



その日の夕方、私たちのいる裏の方まで緊張が走った。

「お客様の避難は済んだか」

「警察への通報は」

妙に物騒な言葉が、行き交う男性社員たちの口から漏れる。

――一階の宝飾店に、刃物を持った女性が押し入っていた。

「強盗、なんですかね……?」