いつもどおり朝起きて、出勤の準備を済ませる。
結婚指環はもらったネックレスに通して首から下げた。
ブラウスの襟の間に見えるようにしてみたものの、すぐに下に隠す。
これをしていたところでそういうアクセサリーなのだと誰も気にしない気もするが、これは秘密の結婚なのだ。
もし、誰かに気付かれたでもしたらいけない。

今日もお茶を飲んでいる間に皆が出社してくる。

「おはよう」

倉下部長が出社してきて席を立つ。
給湯室でお茶をいつもよりも丁寧に淹れた。

「おはようございます。
どうぞ」

「いつもすまないね」

倉下部長の前にお湯のみを置く。
彼は嬉しそうに目尻を下げた。

「美月くんのお茶を飲めるのも、これが最後だね」

「そう、ですね」

今日は倉下部長、最後の日だ。

「ん、旨い」