朝、目が覚めたら蔭木課長は隣にいなかった。

「……」

寝室を出ると、キッチンから小さく鼻歌が聞こえてくる。
目を向けたそこには、蔭木課長が立っていた。
しかも私のものである、ピンクのフリフリエプロンで。
ちなみにこれは私の趣味ではなく、兄のプレゼントだ。

「起きたのか。
おはよう」

ちらっとだけ私を見て、冷蔵庫を開けて玉子を取り出す。
パカリと小気味いい音を立てそれをボールに割り、シャカシャカといいリズムで混ぜていく。

「もうすぐ朝食できるぞ。
顔洗ってきたらどうだ?」

ジャーッと今度は、それを手際よくフライパンへと流し入れた。
さもそれが当たり前かのように。

「……そう、ですね」

とりあえず考えることを放棄して洗面所へ向かった。
冷たい水で顔を洗えば、次第にあたまをはっきりしてくる。

……あれはいったい、なにをしているんだろう。

いや、朝食を作っているのはわかる。