好きなんだから仕方ない。
九章・これもまた運命

君は誰?

産まれてからずっと、誰かの声が聞こえていた。見知った人の声ではない。誰に聞いても分からないその声の正体を知るために俺は今、神の住み処へ来ていた。
予想を遥かに越えた大きな扉を叩いて良いものなのか、声をかけるだけで良いのか。叩けば失礼な奴だと消滅させられそうだし、大声を出しても分厚くて聞こえないんじゃないかと疑問だった。

「入りなさい」

「・・・あっ、失礼致します」

どうしたらと悩んでいると扉がひとりでに動き、青年の声が聞こえた。指示通りに先へ進むと、ちょっとした居間のような空間に辿り着いた。
扉という扉もなく、玄関から真っ直ぐ一本道だったから入る場所を間違えた訳でもなく。でも、俺の後から二人の魂が入ってきただけでこれと言って神らしい人も魔力も無かった。
する事も無く、やった方が良い事も分からず。ただ部屋を見渡して次の指示があるのを待っていると、その声がまた聞こえてきた。
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