蜜月身ごもり婚~クールな旦那様のとろ甘な愛に溺れそうです~【華麗なる結婚シリーズ】
幸せな真実
車の中で何か話せばよかったのかもしれないが、何から話すべきかわからず私は黙り込んでいた。
もちろん蓮人兄さまも何も言わない。

さっき俺を選んでと言ってくれた言葉すら、だんだんと夢だったのかもしれないと思えてくる。

無言のまま家に戻ると、蓮人兄さまは私をソファに座らせ、自分は冷蔵庫からミネラルウォーターと私のストックしてあったリンゴのタッパーを手に戻ってくる。

「これでいい?」
小さく頷いて、それを受け取ると蓋を開けてピックでリンゴを一つ取り、ゆっくりと口に入れて咀嚼する。
「鏡花、今体調は?」
ごくっとリンゴを飲み込むと「大丈夫です」と私は俯いたまま答える。
「今日の打ち合わせも大丈夫だったのか? 鏡花が必要なことはわかるが、あまり無理をするなよ」
先ほどまでとはまるで違う冷静な蓮人兄さまと、打ち合わせという言葉に、私は女性との会話を思い出してしまう。
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