蜜月身ごもり婚~クールな旦那様のとろ甘な愛に溺れそうです~【華麗なる結婚シリーズ】
紙一枚の結婚ですよね?
なんの実感もなく、事務仕事のように婚姻届けに自分の名前を記入した。
後はこれを提出すれば私は大村鏡花になる。自ら結婚したいと言ったのに、この義務のように進む政略結婚に心の中は虚しさや、これでいいのかという不安が広がる。

普通ならば、写真をとって結婚しましたと幸せいっぱいのはずなのに。
好きな人と一緒にいられるだけで喜ぶべきなのだろうか。

そう思いつつ、無意識にため息が零れ落ちていて、慌てて表情を作る。
こんな顔をお父さんたちに見せる訳にはいかない。まさか内情がこんなことになっているなど、知るわけもないのだから。

「じゃあ、鏡花、衣装の打ち合わせの日はまた相談しましょう」
お父さんのお手伝いを長い間してくれている、久本さんに何かをお願いしつつお母さんは私に声を掛ける。


「はい」
小さく頷くと、隣にいた蓮人兄さまがお父さんに頭を下げ挨拶をするのがわかった。

「では、家元、今日はこれで失礼いたします」

「ああ、蓮人君、鏡花を頼んだよ」
初めてだろう、お父さんのその心配そうな表情に驚いてしまう。
< 90 / 189 >

この作品をシェア

pagetop