きみと秘密を作る夜

喪失



「リナ! リナ!」


誰かが私を呼ぶ声がする。

ふわふわと漂う意識を引き戻し、私はゆっくりと目を開けた。



「リナぁ……」


初めに目に飛び込んできたのは、母の泣き顔だった。

大粒の涙をぼろぼろとこぼしながら、「よかった」と声を絞る。


真っ白い天井。



「ここは病院よ。もう大丈夫。何も心配いらないわ」


病院?

言われて記憶を辿り、自分のしでかしたことを思い出した。


じゃあ、晴人は?



「娘は意識を取り戻しました。もうお帰りください。迷惑です」


母の声に再び目を向けると、部屋の隅に、晴人と晴人の母がいた。

晴人の母は涙をこらえるような顔だが、晴人は何も言わずに呆然としたまま。


晴人は一度も私を見ない。



「聞こえませんでしたか? 帰ってください!」


母は、強引に晴人たちを病室から出そうとする。

私は慌ててそれを制した。



「ちょっ、待っ」


伸ばそうとした左手は動かず、包帯が巻かれていた。

でもそんなことを気にしている余裕はなかった。



「お母さん、待って! 晴人は悪くない! 私がいけないの! 私が晴人のこと誘ったの!」

「リナ!」
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