嫁入り前夜、カタブツ御曹司は溺甘に豹変する
あなたとならお見合いします
仁くんのことがずっと好きだった。
いつかこの気持ちに終止符を打たなければいけないとは思っていたけれど、今じゃない、もう少し、まだいいじゃないと心の中で想っているうちに、気づいたら二十一歳になっていた。
そして転機は突然に訪れた。
「結婚しよう」
耳触りのいい私の大好きな声でそう告げた仁くんから、怖いくらい真っ直ぐな瞳を向けられておもわず目を逸らした。
心臓の音が太鼓を打ち鳴らしているかのように激しく全身に響く。
「花帆に好きな人がいなければ、だけど」
気遣うように遠慮がちにかけられた言葉への返事はひとつしかない。
でも、どう返したらいいのか考えがまとまらず、浮かんでは消える言葉は喉をすぐには通り抜けていかなかった。
とても真面目な人なので、安易な気持ちで私との結婚を承諾するわけがない。きっと真剣に考えてくれたはず。
「……えっと」
声が掠れている。恥ずかしさと緊張から身体中に嫌な汗をかいていた。
額に滲んだ汗を手のひらでさりげなく拭った後、顔を上げて遠慮がちに視線を合わせる。
いつかこの気持ちに終止符を打たなければいけないとは思っていたけれど、今じゃない、もう少し、まだいいじゃないと心の中で想っているうちに、気づいたら二十一歳になっていた。
そして転機は突然に訪れた。
「結婚しよう」
耳触りのいい私の大好きな声でそう告げた仁くんから、怖いくらい真っ直ぐな瞳を向けられておもわず目を逸らした。
心臓の音が太鼓を打ち鳴らしているかのように激しく全身に響く。
「花帆に好きな人がいなければ、だけど」
気遣うように遠慮がちにかけられた言葉への返事はひとつしかない。
でも、どう返したらいいのか考えがまとまらず、浮かんでは消える言葉は喉をすぐには通り抜けていかなかった。
とても真面目な人なので、安易な気持ちで私との結婚を承諾するわけがない。きっと真剣に考えてくれたはず。
「……えっと」
声が掠れている。恥ずかしさと緊張から身体中に嫌な汗をかいていた。
額に滲んだ汗を手のひらでさりげなく拭った後、顔を上げて遠慮がちに視線を合わせる。