一匹狼くん、 拾いました。弐

 本当に、嫌になる。

 あんな父親、最悪なのに。


「うっ、うぁ……っ」

 嗚咽が漏れる。

 こんな心も体もボロボロになるまで傷つけられるくらいなら、いっそ一思いに殺されたかった。

 そんな優しいことあの父親がしてくれるわけないけれど。

 俺は仁の腕を振りほどいた。

「……ごめん。俺、今お前らといても楽しめねぇわ。一人になりたい」


「楽しめないってなんだ!俺らはお前に楽しめなんて頼んだこと一度もないぞ!俺らはお前が一緒にいて楽になるなら、それでいいんだよ」

 俺の肩を揺さぶって、仁は叫ぶ。

「……じゃあ楽にならないから、今はほっといてくれ」

 そう言い、俺は仁の腕をどかして歩き出す。

「銀っ、まさか自殺するつもりじゃないよな?」

 葵が俺の腕を掴んで言う。

「……死ねたら、楽なんだろうな。葵は知ってんだろ。俺は血流に襲われたあの日、助けられてほっとしたんだ。

 ……いつ死んでもいいと思ってたハズなのに、心のどっかで死にたくないって思ってた。

 未来に期待してたんだ。自分の世界は地獄だって散々思い知ったのに。……俺は自分の世界が地獄だって認めて死ぬのが嫌なんだ。それなのに、今死ねるわけねーよ」


 自嘲気味にそう言ってから、俺はまた歩き出した。

 翌日からテスト休みになった。その一週間後に行われた一学期の終業式に、俺は行かなかった。

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